
玉川は、環境省によって「平成の名水百選」に選ばれた、京都府綴喜郡(つづきぐん)井手町を流れる一級河川です。
川を流れる水は透き通っていて美しく、春になると川の両堤の1.5㎞にわたって咲く約500本の桜を観るために、多くの観光客が訪れます。
今回は、自然豊かな日本の春を感じることのできる玉川堤のお花見情報を詳しく解説していきます。
今回ご紹介する玉川は、京都府綴喜郡井手町を流れているものですが、そもそも日本では、「清らかな川」を呼ぶ言葉として、「玉川」という単語を使っています。
そのため、日本全国に「玉川」という地名があり、地域で親しまれています。
桜が有名な京都府綴喜郡井手町の玉川は、日本各地の玉川の中でも特に有名な「日本六玉川」に数えられており、「井手の玉川」の名で古来より多くの和歌にも詠まれるほど、人々に愛された清流でした。
しかし1953年の豪雨によって井手の玉川は決壊し、一夜にして井手町役場や玉水駅をはじめとする周囲一帯が水害に見舞われ、多くの家屋と尊い人命が奪われました。
その後、行政と住民が一体となって町の復興と玉川の再生に力を尽くす際に、玉川に堤を築き、桜の植樹を進めたことから、桜の名所として愛される、玉川堤の桜並木が生まれました。
京都府綴喜郡井手町を流れる玉川の堤には、1.5kmにわたって約500本のソメイヨシノが植えられています。
二度と水害が起こらないとようにという地域の方々の想いと、京都の豊かな自然の恵みを一心に受けて育った桜は、どの木も枝を大きく川面に伸ばして花を咲かせるので、橋からはソメイヨシノが玉川に向かってピンク色のトンネルを作っている様子が絶景です。
奈良時代(8世紀初頭~末期)から平安時代(8世紀末~12世紀末)にかけて、多くの和歌に詠まれた井手の玉川ですが、特に「小野小町(有名な女流歌人)」の歌に、「色も香もなつかしきかな蛙鳴く井手のわたりの山吹の花」という一句が有名で、「井手といえば山吹」として広く知られていました。
井手町では水害からの復興を目指す際に、和歌に詠まれるほど愛された井手の山吹の風景をよみがえらせることにも力を入れ、玉川のほとりに約1万本の山吹を植えています。
ちょうどソメイヨシノが散り始めるタイミングで山吹が見頃を迎えますので、風に舞う桜の花びらと、色鮮やかに堤を彩る山吹のコントラストが美しく、人気を集めています。
井手の玉川堤は、京都市内の寺院などの境内に咲く桜と比べると観光客からの認知度が高くないので、混雑していない環境でゆっくりと桜を眺めることができます。
また、桜の植えられている範囲が両堤の1.5㎞にわたるので、お花見客も適度に分散され、静かな雰囲気でソメイヨシノを堪能できるのも、嬉しいポイントです。
特に、堤を下りて川面のすぐそばに立ち、見上げるように桜のトンネルを眺めることができるのは、井手の玉川堤ならではのお花見スタイルでおすすめとなっています。
井手の玉川堤では、ソメイヨシノの開花時期である3月最終週〜4月最初の週にかけて、井手町さくらまつりが開催されるのが恒例となっています。
地域の名産品を購入できたり、美味しいお花見フードを楽しめたりするほか、こども向けの屋台やスタンプラリーなども実施されるので、家族でお花見を楽しむことができます。
またさくらまつりの期間中は、19時〜21時まで夜桜のライトアップも実施され、ほのかに照らされた桜が玉川を水鏡に輝く幻想的な光景を堪能できます。
玉川堤のソメイヨシノが開花するのは、例年3月20日前後です。
約1週間で満開を迎えたころには、山吹も咲き始めますので、桜と山吹の共演を見たい方は、4月初旬が見頃です。
京都府綴喜郡井手町井手柏原60-9
井手の玉川堤にアクセスする際は、関西国際空港から有料特急に40分ほど乗車し、大阪府内の「なんば駅」を目指しましょう。
徒歩10分程の場所にある「大阪難波駅」から、有料特急と各駅停車を乗り継いで1時間ほどの駅である「三山木駅」が、井手の玉川堤の最寄り駅になります。
三山木駅から井手の玉川堤までは、タクシーで5〜6分ほどです。
玉川堤の下流から上流に向かって歩き、桜並木が途切れたあたりから歩いて15分程の場所にある地蔵禅院も、枝垂れ桜の有名な鑑賞スポットとして知られています。
この地蔵禅院の枝垂れ桜は、1727年に植えられたと伝えられており、約300年の時を経て幹周2.4m、樹高約10mと立派に成長しています。
京都府の天然記念物にも指定されていることもあり、多くの観光客がこの枝垂れ桜を観に訪れます。
また山の中腹に位置する地蔵禅院からは井手町の様子を一望でき、自然豊かな京都の風景を楽しむことができると評判です。
京都府綴喜郡井手町井手東垣内16-16
井手の玉川堤から歩いて20分ほどの場所にある龍王の滝は、岩間を縫って糸のような水が流れ落ちる、落差が13mある滝です。
龍王の滝に向かうまでもいくつかの小さな滝がありますが、特にこの龍王の滝は雨の神を祀っているとされる神聖な滝で、その美しさが特徴的です。
昔は日照りが続いた時に、この龍王の滝で雨乞いの儀式が行われていたということです。
京都府綴喜郡井手町多賀
井手の玉川堤から徒歩10分ほど、地蔵禅院の麓にあるのが、井手寺の跡地です。
井手寺は、奈良時代に聖武天皇の政権下で権勢を誇った「橘諸兄」という人物が創建した寺院で、現在はその跡地が整備されています。
かつては約240㎡の広さを誇り、五重塔が建てられていたこともわかっていますが、現在は雄大な自然のなかにたたずむ史跡として、広く知られています。
京都府綴喜郡井手町井手西高月
井手の玉川堤は、地域の人々を水害から守る目的で植えられた約500本の桜並木を鑑賞することのできる、人気のお花見スポットです。
美しく清らかな川とソメイヨシノ、そして山吹のコントラストが美しく、ゆっくりお花見を楽しみたい方、自然のなかで桜を愛でたい方には、ぴったりの場所となっています。